唯一無二の色あせないデザイン性。それが「古材」の持つ魅力だ。
釿(ちょうな)を使い削りだした表面は、荒々しくダイナミックな波状。古来より柱や梁など用材を荒削りするための道具として使われてきた釿は“大工道具の生きた化石”ともいわれ、現在では使いこなせる職人も少ない。
角ノミ一本で精巧な寸法に彫られた「ほぞ穴」。木材は使える限り何度でも使い回すのが当たり前で、かつての日本の家づくりにおいては、新築の家にも古いほぞ穴が残る柱や梁がよくみられた。
あたかも、日本人が木材を大切に扱ってきた刻印のようである。
こうした、当時の大工の丁寧な仕事と、それを使うものの思いに、時の経過が合わさり、飴色に、はたまた黒光りを見せる「古材」は、時に温かみを、時に凛とした緊張感を、それぞれが持ち、見飽きることはない普遍性を有する。
また、「古材」は、機能的な面でも優れた「材」である。木材は乾燥することにより強度を増す。現在、多く使われているのは、高温で強制的に乾燥させる「木材」だ。短時間で強度を上げ、反りや割れなどをなくし加工しやすい「木材」にするのだが、樹脂まで染み出し、木の弾力性や艶はなくなり木材の行う調湿効果は減ってしまう。
一方、伐採から50年を越える「古材」は、長い時間をかけて樹脂を残しながら乾燥して強度の増した「天然乾燥材」であり、新材と比較しても見劣りしない。
大正から昭和にかけて作られた格子戸・蔵戸・障子・襖...。
機能性と美をあわせ持つ古建具は、現在の建築空間においても、趣をあたえる。
時の経過によって醸成された色艶、飴色や黒光りするぬくもり。
多大な手間隙のかかる丁寧な仕事がなされたであろう造形は、
現代においても色あせない高いデザイン性を持つ。
また、中には現在では入手が困難な上質な材料を使った建具に出会うこともある。
商品協力:井川建具道具店 / 電話番号:075-231-2646 / 住所:京都市中京区夷川通烏丸東入ル
タカギデザインは昭和32年、京都の家具屋通りとして知られている夷川通に父・髙木久雄と母の手によって誕生しました。
父の最大の特長、それはお客様の言葉や希望を「絵」に描き起こすということでした。通常の家作りの過程ではまず考えられないことではありますが、これが父親独自のスタイル。キャンバスに描かれた絵は視覚化したお客様のイメージであると同時に、一つの絵画作品でもあったのです。床や壁面といった“箱”としての建築空間ではなく、家具からドアノブといったディテールにいたるまでお客様の視点に合わせ、共にたったひとつの空間を創り上げていく…。
父はすでに他界しましたが、父から受け継いだ「住む人の呼吸や温度が感じられる空間作り」それがタカギデザインのポリシーであり、私の仕事そのものであると思っています。