例えば、店作りの場合は商品という基本コンセプトがあることが大前提ですので、対象となるお客様の立場になって店作りを進めます。従って、家作りほど難しいことはありません。逆に基本コンセプトがしっかりしていないということは、店作りはもとより商売の成否に関わることになるでしょう。しかし、家作りの場合は基本コンセプトが漠然としているお客様が多いというのが私の印象です。我々が行う設計という作業のうち、大半を占めるのが「基本方針をはっきりさせること」といっても過言ではありません。そしてそれを見直し、具現化していくことが家作りの第一歩といえます。
シミュレーションする際、人間に近いもの、例えば家具と照明といったインテリアに着目してみましょう。
いきなり大きな家をイメージするのは難しいですが、身近なインテリアならイメージが沸きやすいのではないでしょうか。
また意匠の観点からも家は人間の目線(目の高さ)で設計するべきだと考えます。
極論をいうと家(箱)より先に家具等(中身)が先に決まっていてもおかしくはないのです。
人間中心、わがままになって考えてみてください。
つまりこのように暮らしたいからこういう家、道具がほしいという発想です。逆にどのようにでも使える家というのは、 自分が家に合わさなければならないことになります。もっとも従来の日本の暮らし方は住む人間が家に合わせるタイプですから、こういう家作りもひとつの形だと思います。重要なことはこれをはっきり認識しているかということです。
例えるならば「ナイフ、フォーク」と「箸」の違いでしょうか。洋食は料理に合わせて道具を選びますが、和食はとりあえず箸でも問題はありません。